慢性腎臓病に関するエンパグリフロジン(ジャディアンス®)の試験計画を発表
- 慢性腎臓病患者の治療薬としてエンパグリフロジンの有効性を評価する新しいアウトカム試験
- 世界において約10人に1人が慢性腎臓病に罹患している1,2
- 本試験はEMPA-REG OUTCOME®試験の心血管疾患および腎疾患に関する結果に基づく
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
当プレスリリースについて
この資料は、ドイツ ベーリンガーインゲルハイムと米国 イーライリリー・アンド・カンパニーが2017年6月12日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。なお、日本におけるジャディアンス®錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管疾患および腎疾患に関する適応は取得しておりません。
2017年6月12日 ドイツ/インゲルハイム、米国/インディアナポリス
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)は、本日、慢性腎臓病患者の治療薬としてエンパグリフロジンを評価する新しい大規模臨床アウトカム試験の実施を発表しました。本試験には、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の患者のみならず、2型糖尿病を合併していない慢性腎臓病の患者を含む、約5,000名を登録する予定です。
ベーリンガーインゲルハイム医療用医薬品部門のグローバルバイスプレジデント、ハンス・ユルゲン・ヴェーレは次のように述べています。「この新しい試験計画は、特にアンメットニーズが存在する領域において、患者さんの健康状態を改善する当社の継続的なコミットメントの一例です。エンパグリフロジンが慢性腎臓病の患者さんにもたらす可能性の発見を心待ちにしています。」
ジャディアンス®(エンパグリフロジン)は、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬です。EMPA-REG OUTCOME®試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者において、標準治療(血糖降下薬や心血管治療薬など)にエンパグリフロジンを追加することで、プラセボ群と比較して心血管死のリスクを38%減少させることが証明されました。また、同試験の副次評価項目の1つでは、腎症の初回発現もしくは悪化を評価した複合エンドポイントの相対リスクが、プラセボ群と比較してエンパグリフロジン投与群で39%低下することも示されました3,4。これらの結果に基づき、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリーは、慢性腎臓病の患者さんにおけるエンパグリフロジンの可能性を検討することを決定しました。現在進行中の作用機序に関する試験および今回のアウトカム試験により、エンパグリフロジンが、慢性腎臓病の腎アウトカムに影響を与えていると考えられる糸球体内圧の是正などを含む、更なる機序の探索に繋がることが期待されます5,6。
ドイツ・ヴュルツブルク大学病院の腎臓病・高血圧部門主任クリストフ・ワナー教授は次のように述べています。「世界人口の10%以上が慢性腎臓病を患っています。その有病率と重症度は患者さんの予後とクオリティ・オブ・ライフに大きな影響を与えています。この重大な医学的ニーズへの対処が期待できる新しい治療薬が必要不可欠です。」
イーライリリー糖尿病事業部の製品開発バイスプレジデント、ジェフ・エミックは次のように述べています。「EMPA-REG OUTCOME®試験の心血管および腎アウトカムに基づき、当社はベーリンガーインゲルハイムと共に、慢性腎臓病の患者さんにおけるエンパグリフロジンの新しい適応の可能性を裏付けるエビデンスを構築するための新しい試験を開始する予定です。」
参考情報
慢性腎臓病について
慢性腎臓病は、時間経過に伴う腎機能の進行性の低下と定義されます。
慢性腎臓病の症例の約3分の2は糖尿病、高血圧および肥満などの代謝性疾患を起因としています1,7,8。特に、慢性腎臓病は有病率と死亡率の増加に関係しています。慢性腎臓病患者の死亡例の多くは心血管合併症の結果生じるもので、末期腎不全に至る前に死亡することも珍しくありません9,10,11,12。慢性腎臓病は世界的に有病率が高く、人口の約10~15%が罹患しています。現状では治療選択肢が少なく、慢性腎臓病における新しい治療選択肢への包括的なアンメットメディカルニーズがあることは明らかです13。
エンパグリフロジンについて
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害剤であり、欧州および米国をはじめ、世界各国で成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されています。
2型糖尿病で高血糖の患者さんに対してエンパグリフロジンでSGLT2を阻害することで、過剰な糖を尿中に排出させます。さらに、エンパグリフロジンの投与により塩分(ナトリウム)を体外に排出させ、循環血漿量を低下させます。
エンパグリフロジンは1型糖尿病患者および糖尿病性ケトアシドーシス(血中または尿中のケトン体が増加)の患者には使用できません。
EMPA-REG OUTCOME®について3,4
EMPA-REG OUTCOME®は、長期、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験で、42ヶ国から心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病の患者7,000人以上が参加しました。
試験では、標準治療にプラセボを上乗せした群と比較して、標準治療にエンパグリフロジン(10mgまたは25mg 1日1回)を上乗せした群の有効性を評価しました。標準治療では、血糖降下薬と心血管治療薬(降圧薬やコレステロール降下薬など)が使用されていました。心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中が最初に起こるまでの時間を主要評価項目と定義しました。
EMPA-REG OUTCOME®試験は腎臓に対するエンパグリフロジンの有効性に関わる潜在的な機序を評価するものではありませんでしたが、腎アウトカムを追加評価項目の事前に定めた探索的解析の一部としました。
エンパグリフロジンの安全性プロファイルはこれまでの試験と一致していました。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、同領域において大型製品に成長することが期待される治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリー・アンド・カンパニーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者ケアへのコミットメントを示し、患者のニーズに応えるべく協力しています。
ベーリンガーインゲルハイムについて
研究開発主導型の製薬企業ベーリンガーインゲルハイムは、130年以上にわたり、医療用医薬品と動物用医薬品において革新的な医薬品を提供してきました。ベーリンガーインゲルハイムは世界におけるトップ20製薬企業の1つで、株式を公開しない独立した企業形態を維持しています。約50,000人の社員が、医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品の受託製造の3つの事業分野において、革新的な製品開発を通した価値の創出に日々取り組んでいます。2016年度、ベーリンガーインゲルハイムは159億ユーロ(1兆9,133億円)の売上高を達成しました。30億ユーロを超える研究開発費は売上の19.6%に相当します。
ベーリンガーインゲルハイムにとって社会的責任を負うのは当然のことです。「Making More Health(人々のより良い健康の実現を目指して)」などの社会的なプロジェクトへの関与はそのためです。ベーリンガーインゲルハイムは社員の多様性を促し、社員の様々な経験やスキルの活用を積極的に進めています。また、環境保護と持続可能な社会の実現に向けて全力を尽くしています。
なお、ベーリンガーインゲルハイムはフランスに本社を置くサノフィ社と戦略的事業交換を行い、2017年1月のクロージングを以て、ベーリンガーインゲルハイムのコンシューマーヘルスケア(CHC)事業をサノフィへ譲渡し、サノフィの動物用医薬品事業であるメリアルを取得しました。
日本では日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社が医療用医薬品ビジネス、ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカ ジャパン株式会社とメリアル・ジャパン株式会社が動物用医薬品ビジネス、そしてベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社が医療用医薬品製造を担っており、ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社が上記4つの事業会社にサービスを提供しています。
イーライリリー・アンド・カンパニーの糖尿病事業について
イーライリリー・アンド・カンパニーは1923年に世界で初めてインスリン製剤を開発して以来、糖尿病ケアの分野において常に世界をリードしてきました。現在も、糖尿病をもつ人々やケアを行う人々の様々なニーズに応えることで、この伝統を築いています。研究開発や事業提携、拡大し続ける幅広い医薬品ポートフォリオ、そして、医薬品からサポートプログラムをはじめとする実質的なソリューションを提供し続けることを通じて、世界中の糖尿病をもつ人々の生活の改善に努めます。詳細はウェブサイトをご覧ください。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
イーライリリー社は、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー社は、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー社の従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
日本イーライリリーについて
イーライリリー社は、世界中の人々の生活をより良いものにするためにケアと創薬を結び付けるヘルスケアにおける世界的なリーダーです。イーライリリー社は、1世紀以上前に、真のニーズを満たす高品質の医薬品を創造することに全力を尽くした1人の男性によって設立され、今日でもすべての業務においてその使命に忠実であり続けています。世界中で、イーライリリー社の従業員は、それを必要とする人々の人生を変えるような医薬品を開発し届けるため、病気についての理解と管理を向上させるため、そして慈善活動とボランティア活動を通じて地域社会に利益を還元するために働いています。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
http://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
http://www.boehringer-ingelheim.co.jp
(ベーリンガーインゲルハイムジャパン)
http://www.lilly.com
(イーライリリー・アンド・カンパニー)
http://www.lilly.co.jp
(日本イーライリリー)
References
- Levin, Adeera, et al. "Global kidney health 2017 and beyond: a roadmap for closing gaps in care, research, and policy." The Lancet (2017).
- Thomas, Bernadette, et al. "Global Cardiovascular and Renal Outcomes of Reduced GFR." Journal of the American Society of Nephrology (2017): ASN-2016050562.
- Zinman B., et al. Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 10.1056 (2015).
- Wanner C, et al. Empagliflozin and progression of kidney disease in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2016;375:323-334.
- Anders HJ, et al. Nephron Protection in Diabetic Kidney Disease. N Engl J Med 2016,375;21:2096-98
- Cherney D, et al. Renal Hemodynamic Effect of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibition in Patients With Type 1 Diabetes Mellitus. Circulation 2014;129:587-597
- United States Renal Data System, USRDS 2012 Annual data report: Atlas of chronic kidney disease and end-stage renal disease in the United States, National Institutes of Health, National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, Bethesda, MD, 2012. Available from: http://www.usrds.org/reference.htm. See Appendix I, United States Renal Data System (USRDS).
- Liyanage T, et al. Worldwide access to treatment for end-stage kidney disease: a systematic review. Lancet.2015; 385(9981):1975-82.
- Sarnak MJ, et al. Kidney disease as a risk factor for development of cardiovascular disease: a statement from the American Heart Association Councils on Kidney in Cardiovascular Disease, High Blood Pressure Research, Clinical Cardiology, and Epidemiology and Prevention. Hypertension. 2003;42:1050–1065.
- Tonelli M, et al. Chronic kidney disease and mortality risk: a systematic review. J Am Soc Nephrol. 2006;17:2034–2047.
- Schiffrin EL, et al. Chronic kidney disease: effects on the cardiovascular system. Circulation. 2007;116:85–97.
- https://www.usrds.org/2016/view/v1_01.aspx.
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney inter., Suppl. 2013; 3: 1–150.