ベーリンガーインゲルハイム、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD: Progressive Fibrosing Interstitial Lung Disease)患者を対象とした第3相臨床試験で患者登録を開始
- ニンテダニブ*の有効性を評価する目的で、初めて様々な進行性線維化を伴う肺疾患患者を対象とする臨床試験が開始されました
- PF-ILDでの臨床試験は、進行性線維化を伴う肺疾患を、一つ一つの診断名ではなく、疾患の臨床所見に基づいて集団として捉える初めての試験です
- 世界で合計600人が登録される予定です
報道関係者向け情報
このホームページでは、国内の報道関係者の方々を対象に、ベーリンガーインゲルハイムジャパングループ各社の情報ならびに関連情報をご提供しています。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
当プレスリリースについて
この資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が2017年3月20日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したものです。なお、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。
2017年3月20日 ドイツ/インゲルハイム
ベーリンガーインゲルハイムは、3月20日、PF-ILD (進行性線維化を伴う間質性肺疾患)の臨床試験に、最初の患者が登録されたと発表しました。本臨床試験ではIPF(特発性肺線維症)を除く、PF-ILDでのニンテダニブの有効性と安全性を評価します1。
肺胞周囲(間質)に影響を及ぼす疾患は200以上あります。このような疾患はILD(間質性肺疾患)と呼ばれます2。臨床所見に基づくと、ILDの疾患分類によらず、進行性線維化の所見を呈する患者集団が存在することが明らかになっています3-6。この患者集団をPF-ILDと本試験では定義しています。PF-ILD患者では、呼吸器症状、呼吸機能、QOL、日常生活能力の低下、ならびに治療を受けているにも関わらず早期に死に至るといったIPFと似た臨床経過をたどることが報告されています3-6。
PF-ILD臨床試験の治験調整医師であるケビン・フラハティ(Kevin Flaherty)氏は次のように述べています。「本臨床試験には、胸部画像で少なくとも肺の10%に線維化が見られ、治療を受けていたとしても、症状、生理機能または画像検査での悪化が見られる患者さんを登録します。この臨床試験はPF-ILD患者を対象とした治療薬候補を研究する革新的な試験であり、ニンテダニブが様々な肺の線維化に対する有効な治療となりえるかを検討する重要な試験です。
オフェブ®という製品名で販売されているニンテダニブは、肺の希少疾患であるIPFを適応として承認されており、呼吸機能の年間減少率での評価で、疾患進行を遅らせることが明らかにされています7-10。IPFでの実臨床での使用経験もつまれてきていることから、今回第3相臨床試験として、ニンテダニブがその他のPF-ILD患者での肺の線維化を効果的に標的とできるかを評価します。
ベーリンガーインゲルハイムのチーフメディカルオフィサーであるクリストファーコルシコ博士は次のように述べています。「ベーリンガーインゲルハイムは、治療法がない、もしくは治療法が極めて限られている線維化を呈す肺疾患の研究に注力しています。この革新的なPF-ILD試験は、臨床試験に参加することが難しかった線維化を伴う肺疾患の患者も登録できるように設計されています。 これは、線維化を伴う間質性肺疾患を、致死的な疾患から、治療可能な慢性疾患に転換させようとするベーリンガーインゲルハイムの革新的な取り組みを表しています」。
PF-ILD臨床試験について11
この二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験では、PF-ILD(進行性線維化を伴う間質性肺疾患)患者を対象に、ニンテダニブ150 mg 1日2回52週間投与での有効性と安全性を評価します。主要評価項目は疾患進行の指標であるFVC(努力性肺活量)の年間減少率です。その他の臨床評価としてILD患者の健康関連QOL指標として、治療の影響を評価するKing's Brief Interstitial Lung Disease Questionnaire (K-BILD)のベースラインからの変化を確認します。その他の主な副次評価項目にはILDの最初の増悪までの期間等が含まれます。臨床試験にはHRCT(高解像度コンピュータ断層撮影)で肺の線維化が確認され、治療していたとしても呼吸機能と呼吸器症状または胸部画像が悪化しているPF-ILD患者を登録します。
臨床試験の詳細は下記サイトをご覧下さい。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02999178.
PF-ILDについて
ILD(間質性肺疾患)には200以上の肺疾患が含まれますが2、広く認められた疾患分類基準はありません。一方で臨床所見に基づき、ILDのそれぞれの診断名によらず、ある時点で同じような進行性の表現型を示す患者がいます。呼吸機能の低下や早期の死亡など3-6、疾患の特徴が類似していることから、ILDの診断名に関わらず、これらを一つの集団として捉えることが適切と考えられます。PF-ILDはこの患者集団を包括的に捉え用いている用語です。
オフェブ®(ニンテダニブ)について
オフェブ®(ニンテダニブ)は希少肺疾患のIPF(特発性肺線維症)の治療を適応として承認されています7-10。オフェブ® は肺線維症の発現機序への関与が示唆されている増殖因子受容体を標的とします。ニンテダニブが線維化の経過に関わるシグナル伝達経路を遮断することで呼吸機能の低下を遅らせると考えられています8,12,13。動物試験では、ニンテダニブの線維化抑制作用が肺線維化疾患の原因に左右されないことが証明されています14。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、世界でトップ20の製薬企業の1つです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で約50,000人の社員が事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。
ベーリンガーインゲルハイムにとって、社会的責任は企業文化の重要な柱であり、その中にはグローバル規模のイニシアチブ「Making More Health(人々のより良い健康の実現を目指して)」などの社会的なプロジェクトへの関与や、社員への思いやりの精神などがあります。また、お互いに配慮し、平等な機会を提供し、業務やキャリアと家族生活との調和を重んじることは、相互協力の基盤となるものです。また、環境保護と持続可能な社会の実現に向けて注力しています。
2015年度は148億ユーロ(約1兆9,873億円)の売上高を達成しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、売上の20.3%相当額を研究開発に投資しました。
なお、ベーリンガーインゲルハイム はフランスに本社を置くサノフィ社と戦略的事業交換を行い、2017年1月のクロージングを以て、ベーリンガーインゲルハイムのコンシューマーヘルスケア(CHC)事業がサノフィへ、サノフィの動物用医薬品事業であるメリアルがベーリンガーインゲルハイムへと移管されました。
日本では日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社が医療用医薬品ビジネス、ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカ ジャパン株式会社とメリアル・ジャパン株式会社が動物用医薬品ビジネス、そしてベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社が医療用医薬品製造を担っており、ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社が上記4つの事業会社にサービスを提供しています。
詳細は下記をご参照ください。
http://www.boehringer-ingelheim.com
(ベーリンガーインゲルハイム)
http://www.boehringer-ingelheim.co.jp
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
References
- Clinical trial: Efficacy and Safety of Nintedanib in Patients With Progressive Fibrosing Interstitial Lung Disease. Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02999178 (last accessed 15 March 2017)
- Valeyre D, et al. Interstitial lung diseases. In: Annesi-Maesano I, Lundbäck B, Viegi G (Eds.), Respiratory Epidemiology 2014; p. 79-87
- Walsh SL, et al. Connective tissue disease related fibrotic lung disease: high resolution computed tomographic and pulmonary function indices as prognostic determinants. Thorax 2014;69(3):216-22
- Travis WD, et al. An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement: Update of the international multidisciplinary classification of the idiopathic interstitial pneumonias. Am J Respir Crit Care Med. 2013;188(6):733-48
- Akira M, et al. Long-term follow-up high-resolution CT findings in non-specific interstitial pneumonia. Thorax 2011;66(1):61-5
- Kim EJ, et al. Usual interstitial pneumonia in rheumatoid arthritis-associated interstitial lung disease. Eur Respir J. 2010;35(6):1322-8
- OFEV® Summary of Product Characteristics. Boehringer Ingelheim International GmbH. January 2017
- Richeldi L, et al. Design of the INPULSIS® Trials: Two phase 3 trials of nintedanib in patients with idiopathic pulmonary fibrosis. Respir Med. 2014;108:1023-30
- Richeldi L, et al. Efficacy of a tyrosine kinase inhibitor in idiopathic pulmonary fibrosis. N Engl J Med. 2011;365:1079-1087
- Richeldi L, et al. Nintedanib in patients with idiopathic pulmonary fibrosis: Combined evidence from the TOMORROW and INPULSIS® trials. Respir Med. 2016;113:74–79
- Data on file. Boehringer Ingelheim. PF-ILD Clinical Trial Protocol
- Hilberg F, et al. BIBF 1120: Triple Angiokinase Inhibitor with Sustained Receptor Blockade and Good Antitumor Efficacy. Cancer Res 2008;68:4774-4782
- Wollin L, et al. Antifibrotic and Anti-inflammatory Activity of the Tyrosine Kinase Inhibitor Nintedanib in Experimental Models of Lung Fibrosis. J Pharmacol Exp Ther 2014;349:209–220
- Wollin L, et al. Mode of action of nintedanib in the treatment of idiopathic pulmonary fibrosis. Eur Respir J 2015;45:1434–1445