第48回(2011年度)ベルツ賞贈呈式


【ベルツ賞 掲載内容の不備に関するお詫びと訂正】

平素より弊社のサイトをご利用いただき、誠にありがとうございます。さて、本サイトで1月23日から掲載しているベルツ賞の受賞内容において、“第47回(昨年)と同じ写真”が掲載されてされている状況がございました。謹んでお詫び申し上げますとともに、ページを訂正しましたことをお知らせ致します。


2011年11月25日、東京・南麻布のドイツ共和国大使公邸で、第48回ベルツ賞の贈呈式が執り行われました。

ベルツ賞は、医学研究を通じて日独両国の親善・協力関係を推し進め、日本における医学研究を支援する目的で、C.H.ベーリンガーゾーン(現・ベーリンガーインゲルハイム)の社主であった故エルンスト・ベーリンガー博士によって1964年に設立されました。正式名称は「エルウィン・フォン・ベルツ賞」。1876(明治9)年に日本政府の招きで来日し、東京大学の前身である東京医学校で教鞭をとり、多くの日本人医師を育てたエルウィン・フォン・ベルツ博士に由来しています。ベルツ賞は今回で48回を迎え、半世紀近くも続いており、数ある日本の医学の学術賞の中でも優れた賞であるとの定評を得ております。

2011年度の募集テーマは「アルツハイマー病」

贈呈式は、駐日ドイツ連邦共和国大使 フォルカー・シュタンツェル閣下の御臨席のもと開会されました。シュタンツェル閣下は、「日独交流150周年の歴史の中でも、学術交流は極めて重要な位置づけを占めており、学術交流に貢献した数多くのドイツ科学者の中の1人であるベルツ博士の名前を冠した賞が、ベーリンガーインゲルハイムによって設立され、長年優れた医学論文を表彰してきたことは、日本医学界と同社の関係のみならず、ドイツと日本の学術交流の進展にも大いに貢献しています。ドイツ大使公邸で贈呈式が開催されることを心から歓迎します。」と述べられました。

今回のベルツ賞の対象論文はアルツハイマー病領域でした。9編の応募論文が寄せられ、京都大学 名誉教授・先端医療振興財団 理事長 井村裕夫先生、東京大学 名誉教授・自治医科大学 学長・日本医学会 会長 髙久史麿先生、東京大学・大阪大学 名誉教授、理化学研究所 研究顧問 豊島久真男先生、京都大学 名誉教授・大阪バイオサイエンス研究所 理事長 早石修先生、ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社 代表取締役社長 鳥居正男の常任委員と、5名の専門委員から構成される10名の審査員の厳正な審査の結果、受賞論文が選考されました。

専門委員を代表して選考経過を報告された、大阪大学大学院 情報統合医学講座・精神医学 教授 武田雅俊先生は、アルツハイマー病の発見と研究、治療薬の開発の歴史について紐解かれ、「現在、世界中の研究者が治療薬の開発を目標に研究を推し進めています。その中で、伝統あるベルツ賞でアルツハイマー病がテーマに選定され、ベルツ賞の名にふさわしい研究を顕彰できることは、非常に喜ばしいこと」と述べられ、2編の論文を高く評価されました。

2011年度の1等賞は、「アミロイド蓄積開始機構の解明と治療薬開発への展開」、2等賞には「アルツハイマー病:βアミロイドをめぐる分子病態と先制医療への展望」が選定されました。

Aβの重合と蓄積の分子機構の解明を目指す

1等賞の論文は、アルツハイマー病発症の原因であるアミロイドβ蛋白 (Aβ)の重合体の蓄積開始機構の解明を目指し、Aβは神経細胞膜を構成する脂質分子の一つであるガングリオシドに結合し、重合を開始することを発見しました。さらに、本研究により得られたAβ重合と蓄積の分子レベルでの情報をもとに、アルツハイマー病の予防・治療薬の開発に着手しました。本研究の成果は、パーキンソン病、プリオン病、糖尿病などのアミロイドーシスと呼ばれる難病の病態解明と治療薬開発にも適用が期待されます。
2等賞の論文は、アルツハイマー病の脳においてアミノ酸残基42個のAβ42分子種が最初期から蓄積すること、その産生は家族性アルツハイマー病遺伝子の変異により亢進することを実証しました。さらにAβ産生酵素γセクレターゼについて、その形成過程、構造機能連関、モジュレータ薬の作動機構を解明しました。またβセクレターゼ、Aβ抗体療法の作用機序についても新知見を得ています。これらの疾患修飾薬を臨床に橋渡しすべくJ-ADNI臨床研究を先導し、アルツハイマー病先制医療への道を開拓しました。

受賞論文の著者には、1等者800万円、2等者400万円の賞金とメダルが、ベーリンガーインゲルハイム取締役会 会長 アンドレアス・バーナー博士から授与されました。挨拶に立ったバーナー博士は、「アルツハイマー病は、近年の研究開発の発展により、発症メカニズムを紐解くための膨大な患者データが蓄積されるとともに、バイオマーカー開発が急速な進展を見せています。しかし、現行の治療法は、症状こそ改善するが、疾患の進行抑制に寄与するものではなく、根本的な治療法は残念ながら未だ確立されておりません。製薬業界や学術機関の研究者にとって、アルツハイマー病の革新的な治療法を確立し、逼迫した治療ニーズに応えることは緊急課題であると考えます。この2つのベルツ賞受賞論文研究は、こうした課題に対処するために多大な努力が払われており、治療法確立への大きな一歩となることを確信しています。」と、受賞者の功績を称えました。賞の贈呈後、厚生労働省大臣官房審議官 唐澤剛様、日本医師会 副会長 羽生田俊先生(日本医師会 会長 原中勝征先生代理)から祝辞をいただきました。

また、常任委員の豊島先生は「ベルツ賞には、2つの大きな特長があります。1つは日本の近代医学の黎明期に大きな功績を残されたベルツ博士の名前を冠していること、もう1つは毎年1つのテーマを選び、公募された論文を評価していることです。これまでの受賞者を見ても、ベルツ博士の名にふさわしい、オリジナリティの重視された論文が名を連ねています。本年の受賞者も、病気の克服に向けて、素晴らしい努力の成果を挙げられました。」と受賞者を称えました。

受賞者を代表して、1等賞の国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター センター長 柳澤勝彦先生は、「100年前、稀な疾患であったアルツハイマー病は、現在、日本で200万人、世界で2,000万人が罹患されているとされ、その数はますます増加すると懸念されています。2,000年代に入って、治療薬創出の機運がうねりのように高まってきていますが、残念ながら、アルツハイマー病の根本的な治療薬はまだ開発されていません。」と、疾患制圧の困難さについて触れ、「ベルツ博士の時代、結核や脚気は多くの犠牲者を出しました。しかし、今日、結核は予防、治療され、脚気は死語となりました。アルツハイマー病も必ずや制圧できると信じています。」と話し、研究をさらに進めていく覚悟を示されました。

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2011年度受賞論文